石川淳『紫苑物語』

再読。とはいえ前は表題作「紫苑物語」しか読んでおらず、残り2篇の収録作「八幡縁起」と「修羅」は初読。
物語の構成に必然性が感じられず、ただただ恣意的に、ときに突拍子もない展開で進む。伏線とか、なんかそんなん知らぬ存ぜぬな調子で進む。でも、それで全然いいじゃんと思えてしまう。リズムと、会話のテンポと、そしてなにより不必要な言葉すべてを削ぎ落としたような、自信に満ちた足取りに、それでいいじゃんと思えてしまう。ストイックだけどやさしい感じ。いろんな小説があるもんだなあちくしょう。
ちなみに、八幡の話がなにげに源氏に絡んでることを鎌倉旅行直前に気づいて「おおっ」って思った。

紫苑物語 (講談社文芸文庫)

紫苑物語 (講談社文芸文庫)