石川淳『紫苑物語』

自宅への帰途に一匹の鼠を見た。
地下鉄の出口を出てすぐの民家のシャッター前をかさかさかさかさと動き消えた。
鼠を見たのなどかれこれ二十年ぶりだ。と思う。小1まで住んでいた国道に面した小路の溝で大柄なそいつを見て以来、鼠を見たという記憶が無い。
その姿に読みかけの、正確には、二周目の途中の、小狐のよぎる様を見た。
ような気がした。

珠玉、という形容が良く似合う。
いつまでも溶けて欲しくない飴玉のような。
でも溶けて無くなってしまうから飴玉は甘いのであって。
二項の融和。
渾然。

薦められた本をその翌日に買いに出掛け
その日の内に読了し、
即座に一週間かけて再度読み直す。
このような体験は初めてでございました。
感謝。