絲山秋子『イッツ・オンリー・トーク』
文春文庫。表題作と「第七障害」の短編2つ。風呂に浸かりながら、さらさらと読めた。初絲山。これがデビュー作なんですね。
どちらの話も、全体を通じて、ずいぶんと簡単に書き流していているような印象を受けた。実際の創作現場、作者内の葛藤や試行錯誤プロセスなどは知る由もないけれど、その手から放たれた文章を読むかぎり最初に感じたのはそれだった。この感覚はなんだろう。主人公が無気力気味に見える、というだけではないように思える。
上村祐子(書店員さん!)の解説によれば「男も女もフラットに書ける小説家」なのだという。これが「男も女もフラット」ということなのかまだピンとこないし、他作品を読んでみなければわからないが、「フラット」という点はたしかにそうなのかもしれない、と思った。
物語は淡々と進行する。心情と風景の描写が一人称でさらりと入れ替わり立ち替わり、自然に流れる。人物たちの葛藤は突っ込んで説明されない。起こる出来事の理由や原因はさほど語られない。だから、さらりと読めてしまうのかもしれない。その匙加減は好みな方だし、そういった意味ではスルメかもなのだけれど、再読したくなるほどの引っかかりがあったかどうかは微妙。
しみたのは、1カ所、このセリフ。
俺はいつもここで言い過ぎるんだ。
(「第七障害」P179)
以下、魅力を感じた気づきメモ。
- 小説ならではの情報開示順(「こいつ、実は。」をしれっとやれる)
- 時間の飛ばし方
- セリフ中に登場する方言
- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/05
- メディア: 文庫
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