後輩の通夜

大学の後輩が死んだ。
後輩といっても俺が卒業したタイミングで入れ違いで研究室に入ったので
同じ時期を過ごした訳ではないのだけれど
卒業後に何度か顔を合わせたことのある男だった。
なんだか不思議な佇まいで、なんかフランス語に詳しいっぽくて、
アーティスティックな匂いを漂わせる男だった。
正直俺は彼のことをよく知らないし、
向こうも俺のことなんてもう忘れちまっていたかもしれないけれど
紛れもなく俺の後輩で、関係ないけど俺の弟と同じ歳だ。
通夜で、葬儀委員長を務めた教授の震える声を聞いて、
参列していた研究室の先輩後輩を目にして、
そのほか会場に入りきらないほどの参列者を目にして。
ああ、なんて愛された男だったんだ君は。
君と学生生活を共にしてみたかったなあ。
何かの折にゆっくり語ることができたらよかったなあ。
って思った。通夜なのに。
馬鹿野郎。俺の大切な人たちを泣かせるんじゃねえ。