円城塔『オブ・ザ・ベースボール』

文春文庫。文學界新人賞の表題作と「つぎの著者につづく」の2篇。初円城は、出張からの帰途、羽田空港有隣堂で文庫を物色して、たまたま。決め手は「薄さ」と「文字の大きさ」と「伊藤計劃を読んだ直後で興味があった」。
羽田→新千歳で前者を読了。文學界新人賞受賞作の分量は鈴木換算で羽田→新千歳ぐらいなんだななどと思いながら。後者はその後、札幌の地下鉄でちびちびと。
オブ・ザ・ベースボール」わかりやすすぎてわからない特異な設定と、ツッコませてくれそうでくれないそのサスペンスによって最初から引きずり込まれて最後まで引っ張られる小説。執拗に繰り返される「それは関係ない」という言い訳めいたコメント。テンションはずーっと変わらないまま、しっかり山場を迎えてしっかり終わる物語。
つぎの著者につづく」これを書いている今、もうほとんどなにも思い出せない。注釈はスルーしながら読み進めて、最後にまとめて目を通した。
どちらも面白い。著者にとって読み手にとって、実験なのか挑戦なのか狙い通りなのか平凡なのか、どうしてわけわからんのか、どうして面白いのか、その糸口をつかむためには、もっと時間と行動がかかりそう。
なんだろうこの「この世に産み落とされてしまったテクスト」感は。これを書き始め、書き続け、書き終えられる、この筆の進行をを支えるものとは。

オブ・ザ・ベースボール (文春文庫)

オブ・ザ・ベースボール (文春文庫)