高校の卒業式の、校長先生の言葉を思い出したい。

3/15の北海道新聞朝刊1面コラム「卓上四季」に、卒業式の式辞の話があった。

春3月、卒業式の季節を迎えた。いささか唐突な質問で恐縮だが、母校を巣立った際、校長が述べた式辞を覚えておられるだろうか。懸命に古い記憶をたぐり寄せたものの、多くを思い出せない

これを読み、高校時代の校長先生のことを思い出した。
彼はとても話が短かった。たしか私が高校に入学した年が、彼にとっても校長としての赴任初年度だったはず。忘れもしない避難訓練のとき。訓練後、促され登壇した彼はたった一言

「今日の訓練は概ね結構でした。」

とだけ述べて降壇。一瞬の間をおいて、1000人からの全校生徒がどよめいた。その短さは、皆が小学生の時分より植え付けられていた「校長の話は長い」の常識を思い切り覆した。そして「もっと短きゃいいのに」が現実になったのを目の当たりにし、誰もが驚愕するよりほかなかったのである。
その後も「校長先生からの挨拶」があるような機会があるごとに、ごくごく短い言葉で簡潔にメッセージを発した校長。避難訓練は3年連続で「概ね結構でした」オンリーだった。時と場合によっては全校生徒から喝采すら起こったことがあったと記憶している。
奇を衒ったパフォーマンス然では決してない。小柄で、飄々と知性を漂わせる校長は、それが合理的であるという説得力をもって、短い言葉を発しているように見えた。
幸運なことに在学中の3年間、校長の交代はなかった。そして卒業式。私は校長の式辞を内心とても楽しみにしていた。まさか一言ということはあるまい、と思っていたが、きっと短く凝縮された、知性に満ちた含蓄のある言葉を頂けるのだと予想していた。そして予想通り、いつもよりやや長めの、けれど普通に比べればずっと短めの言葉を校長は贈ってくれた。話を聞きながら、ふつふつと内から湧き上がる感動に静かに震えたことを覚えている。


…覚えている。感動したのは覚えている。のだが、肝心の話の中身が一切思い出せないのである。絶対にいい話だったはずなのに。残念すぎる。


北海道小樽潮陵高等学校2000(平成11)年3月卒で、野津寿一校長による式辞の内容をご記憶の方、いらっしゃらないでしょうか。もしいらっしゃったら教えてください(と、虚空につぶやく)。あー、野津先生お元気なのかなあー。


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ググったら近況が出てきた。便利な世の中になったもんだ…。授業、ちょっと聞いてみたい。
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