英国王のスピーチ

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しっかりと地味で、しっかりと知的好奇心を刺激され、しっかりと盛り上げ、しっかりと腑に落ちる映画。観終わって静かに震えた。
後の王こと主演のコリン・ファースは吃音に悩んでいてうまくスピーチができない。その姿もさることながら、周囲の人々(父や兄)の「自然とできてしまう感じ」と「できないことがわからない感じ」が、観ていてとても身にしみた。おそらく誇張はされているものの、はたで見ていれば怒りをおぼえんほどの彼らのようなことを、きっと多かれ少なかれ普段われわれは無意識にやっている。当事者の悩みを解決するためにプロフェッショナルとしての知識と技術が必要なことは理屈では理解できるが、本当のところでわかっているかどうかは非常に疑わしいし、プロフェッショナルでない者として当事者の気持ちに寄り添い続けることは更に困難だ。そういった意味でヘレナ・ボナム=カーター演ずるエリザベス妃の在り方が、またしみる。
演劇部出身者としては教師の設定がニヤニヤものだし、発声練習を含む各種トレーニングの様子がしみじみとワクワクする場面である。あと、終盤近く、教師の妻のリアクションがとっても好きだった。そうそう、そりゃそうだよねー、と、ハッとさせられる、このタイミングでよくぞ、だと思う。
ところでコリン・ファースに対して得体の知れない親近感がずっとくすぶっていて、今これを書きながらようやく「ああ、林雄司さん(DPZ)に似てるんだ」と気づいた。