武者小路実篤『友情』

新潮文庫。モヤモヤ男子のリアリティを欠いた妄想ガールズトーク。暮れに読み始めかけて「きっついなこれ」と思い中断していたのを正月休みに読了。改めて、きっついわこれ。
憂国を気取ってみたところで、しょせん男なんて、なんてのを的確に活写した小説だと思った。好いてる女性と意見を異にしてしまった際の「俺あいつのことなんか好きじゃなかったもんな」みたいな感じ方とか「俺あいつの中身じゃなくてただ外見がかわいいと思ってただけだったんだな」みたいなのとか、自己中心的な逡巡がいちいち面白い(そんなときに自己中心的でいられない人間は果たしてどれだけいるだろうか?)
面白かったし、読みやすかったし、中盤からラストまでのまくり方などとてもぐっときたし、読んでよかったと思う。小説の中の「手紙という形式」って臨場感を増すね、やっぱ。けれども、正月早々説教されてる感じがしちゃってさあ。もう。

男と女とはそう融通のきかないものではないよ。皆、自分のうちに夢中になる性質をもっているのだ。相手はその幻影をぶちこわさないだけの資格さえもっていればいいのだ。
(P27)

畳み掛けるような男心の暴発描写には信憑性があるのだが、女心的な描写のほうはなんだか本宮ひろ志の描く(男に都合のいいような)女性像っぽくなくもない。男の私は想像するより他ないのだけれど、ちなみに信じていいんですかね?実篤先生。

友情 (新潮文庫)

友情 (新潮文庫)