保坂和志『プレーンソング』

中公文庫。柴崎友香『きょうのできごと』の解説が面白かったので、きっと同じ感じの人なんだろうと予想して読んだ初めての保坂和志
強く訴えかけてくるものがなにもなくて心地よい物語。あっちいったりこっちいったり、よどみなくだらだらと連なる言葉のリズムが快感。楽に読めるが、いちいち勘繰ろうとすると疲れてしまうし、わりと序盤で「あ、いちいち勘繰っても仕方ないんだな」と思わせてくれるので、まあ大丈夫か。終盤、ちょっとテーマの暗示めいちゃうところが残念だけれど(わかりやすくはあるんだけど、徹せていないという意味で)、数ページ続く会話シークエンスが圧巻。
この人の本ばっかり読んでたら、きっとどんどんつまらなくなる。でもときどきは読みたい。そんな感じ。
文庫版の裏表紙にある説明文が、わけわかんなくて、でも読んだ後だと「たしかにそうだわ」と妙に納得できる。引用。

うっかり動作を中断してしまったその瞬間の子猫の頭のカラッポがそのまま顔と何よりも真ん丸の瞳にあらわれてしまい、世界もつられてうっかり時間の流れるのを忘れてしまったようになる…。
猫と競馬と、四人の若者のゆっくりと過ぎる奇妙な共同生活。冬の終わりから初夏、そして真夏の、海へ行く日まで。

この小説が1990年かー。俺、いかに今まで、何も読まずに生きてきたんだろうな。淡々と読むリズムをつくっていくしかないわ。

プレーンソング (中公文庫)

プレーンソング (中公文庫)