大宮エリー『生きるコント』

文春文庫。
ずっと名前はあっちこっちで聞いたことあるけど…状態だった大宮エリーとの初本格接触は、きょねんパルコで入ってみた「思いを伝えるということ展」。その勢いで、同じくずっと「聞いたことはあるけど…」状態だった本書を読んでみた。
一片の説教がましさも差し挟まずに綴られるエッセー。得られるものは笑いと勇気。コンビニエンス人間賛歌。深夜の風呂場でひとりで読んでて「はっは。」とナチュラルに声が出ちゃう、そして響いちゃう感じの。
「星のもと」という常套句があるけれど、実体験でありながら、それを自らネタにできるということは、いわゆるド天然(自分からすれば「当然ですけど何か?」状態)ではなく、後付け的にであるにせよ、それを「笑えること」として相対化できているということなわけで、つまりは(解説で片桐仁も指摘しているところだが)そういう発想と行動力とをナチュラルに持ち合わせているということなんだろうな。

一本、一本を大事に、相撲をとるように書いて参りました。家族ネタで押し切るときもあれば、仕事ネタですくい投げを狙ってみたり。とにかく日々雑感的なエッセイではなく、読んだ人がそれをネタとして話したくなるような、落語的エッセイにしたい、と、自分なりに目標をたてて続けて参りました。
(「文庫版あとがき」P217-218)

実体験型の笑えるエッセー。こういうの、自分がぜんぜん読んでこなかったなと思う。中学時代に原田宗典のエッセーばっかり読んでニヤニヤしてた頃を懐かしく思い出した。たまにはいい。あたまほぐれる。

生きるコント (文春文庫)

生きるコント (文春文庫)