山際淳司『スローカーブを、もう一球』

角川文庫。湯船にて1篇ずつ大切に。熱くなりすぎなくて快適な筆致。
この本を読み終えてブログを書くにあたり、はてこれは、私の年初の目標であった「小説や戯曲をいっぱい読むぞ」の中の一冊に加えていいのか迷ってしまった。つまり私の中に「ノンフィクション」というジャンルについての想定がなかった。この目標の意図は「本を通じてたくさんの物語にふれよう」ということなので、当然カウント。いったいどんだけ取材してるのか。どんな気持ちでこんなに丹念に辛抱強く、そしえクールに、人間なるものをあぶりだし、刻みつけているのか。かっこよすぎるわ。
スポーツの意味ってなんだろう、と、ときどき考えることがある。たとえばスポーツをもたない宇宙人が地球でスポーツをプレイしている人たち、それに熱狂する人たちを見たら、なんて思うんだろう。各競技にその成立の物語こそあれ、恣意的に決定されたルールのもとで、肉体と精神とを追いつめながら競いあう。「で?」と言おうと思えばいくらでも言える。これっていったいなんなんだろう。
著者が本書の最後に引いているヘミングウェイを引くまでもなく、本書にはその答えのいくつかが織り込まれているような気がする。
スポーツっておもしろい。江夏かっこいい。

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))