57 years old

熱心なファンでもないし歌舞伎を観たこと自体ほとんどないし、たまたまこの前現代劇を1本観ただけなのだけれど、おそらく「観たばかりだ」という以上に迫ってくるこの喪失感は何に起因しているのだろう。私の記憶の中にある彼(といってもせいぜいここ10年とちょっとだろうか)は、なんだかいつでも「脂が乗っている」という形容がぴったりくるような、そんなイメージだった。彼のキャリア的に実際そうであったのかどうかは詳しく知らないが、イメージとして。脂が乗りきった、生命のぎらつきそのもののような、それは不可逆的に失われてしまった。「もったいない」だなんて遺されたほうの勝手な言い分でしかないとは、頭じゃわかっちゃいるのだが、言わさる。私はきっとこれからもストレッチをしながら「伝統芸能(の人間)はだいたい(からだが)かたい」というセリフを「んなこたーないでしょ」って思い出しながら、その身体の凄味を思い出しながら、生きていくと思います。中村勘三郎さん、ご冥福をお祈りします。