趣味へのあこがれ

履歴書の趣味欄には「演劇鑑賞」と書いていた。新卒の就職活動のときには「年間100本の舞台を観ている」と書いた。
それ以前に「趣味は?」なんて訊かれることもなかったし、回答を用意しておく必要もなかった。それまでは部活と部活の延長的につきあってきた演劇を「趣味」と言い切ったのも、就職を意識したときからだったと思う。
いまもたまに趣味を訊かれると「演劇鑑賞」と答える。100本にはほど遠いけど年に数本は観ているし。最近だとそれに加えて「文房具」と答えるだろうか。どちらも好きなことにまちがいないし、この答えかたで困らない。
けれども近頃、非常にむくむくと「熱中できる趣味をもつことへの憧れ」が首をもたげてきている。空前の趣味ブームである。やっぱりねえ、ちょっとガチでアレなくらいのめりこむ趣味のひとつくらいあったほうが人間おくゆきが出ると思うんだよね。あとバランスが取れるというか、精神衛生上いいと思うんだよねえ。
できればそれは、仕事とかとはまったく関係のないものがいい。「え、なにそれ?」みたいな突拍子もないやつ。それに、ひごろ夜が遅い稼業なんで、外に出かけるというよりは自宅でできるものがいい。そして、あんまりアタマを使わなくていいフィジカルなものがいい。となると、手を動かしてなんかつくるとか、そういうのがいいなあ、アナログな手ざわりとかを大切にしたいじゃない、なんて思うんだけれど、なんせ残念なことにわたしは手先が不器用である。それがいたい。
たとえばわたしは小学生のときにミニ四駆に熱中していた。おとなになった今ふたたびミニ四駆におとなならではの取り組み方をする、ミニ四駆じゃなくてもプラモデルとかさあ、というのは、じゅうぶんアリな気がする。しかしながらわたしは手先が不器用なのである。小学生のときですら、自分の不器用さに残念な気持ちになっていたことがある。そうだよなってたよ。ちゃんとやすりかけられなかったり色が塗れなかったりさあ。ほんといま思い出して苦い気持ちになったよ。
そういえば小学生のときにコイン集めてたことがあって、コロコロコミックの後ろの方に広告出てた、毎月色んな国のコインが届くやつ。それと別に独自で手に入れたコインは、ケント紙とセロハンで自作したケースにしまってた。1年ぐらい続けてた気がする。あのコインいま実家のどこにあるんだろう。いずれにせよおとなになった今、そしてインターネットでいくらでも上には上がいることを見せつけられる今、コレクション系の趣味はわたしの性に合わない気がする。