伊藤計劃『ハーモニー』

ハヤカワ文庫。情報考学にそそのかされてAmazonポチリ。しばらく寝かせた後に(厚いので気後れしていた)、通勤地下鉄で読み始め、東京出張往路機内で残りを読了。全身を震わせながら着陸。SFへは特に親しんでこなかった自分として、特にSFだと意識することなく、じっくりぐいぐいがっちりどっぷり楽しめた。ぞっくぞく。
キャッチーで深みのある舞台設定。つまりは「問いの立て方」が秀逸ということですよね。いい回答を引き出すにはいい質問ができなければ。そのためには閃きアイディアだけでなく、きっと粘り強い検討・読みも必要だろうと想像する。「回答」を書き始める前に、精度の高い「問いを立てる」ことに労を惜しまずいられるか。急かずに、読者が夢中になれる問いを。その後の回答で、道程で、夢中になった読者を満足させられるか…
ときどきまれに、ご都合的な印象をほのかに抱く程度の話のすっとびかたが気になるが、そこを丁寧に描いてしまっては小説というパッケージとして長大になりすぎるという意味では、正解なのかもしれない。
「?」のかわりに「…」なのがおもしろい。

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)