朝倉かすみ『田村はまだか』

光文社文庫。同郷かつ北海道発作家(今は東京在住?)なこともあり、しかもこのタイトルで、ずーっと気になりながら手を出せていなかった作品。
目次で「あ、短篇集なんだ」と知り、その後「あ、短篇の連作なんだ」と知り。タイトルだけを自分のなかで随分と噛んで噛んで転がしてから読み始めたからか、そんなに「田村はまだか」って連呼しなくてもいいんじゃないのってことを感じた。例えば「走れメロス」が作中で何回も「走れメロス!!!!」って言ってたらちょっとうざいかなーというその程度だけど。
さらさらと読めて、読みやすくて、けれど物足りなくもない感じで。当初は会社帰りの地下鉄で自然とページを繰っていたのだけれど、いつしか開かなくなってしまって。どこかに連れてってくれるのではなく、今いるところの「わかっちゃいるけど、あまりよく見ていない部分」にそうっと寄り添うような小説だと思うんで、まして俺、札幌に暮らしながら読んでいるんで、嬉しい部分もあるんですけど気が乗らないことも間々ある、そんな本。ちょっとの放置期間をおいて、残りを家で一気読み。


ぐっときた箇所を写経。

「ようやく人生に関わってきたってこと」
「鈴木はいまだ人生に関わってないってことか」
(「田村はまだか」P29)

六年一組が沸き返った。紙吹雪が見えたようだった、と、これはエビスの弁。
(「田村はまだか」P36)


以下、魅力を感じた気づきメモ。

  • 「市井の人が日常的に口にする名言」をちりばめたような。
  • やましい気持ちの、肯定も否定もしすぎない描き方。



すごい栞が挟まってましたよ。


田村はまだか (光文社文庫)

田村はまだか (光文社文庫)