舞城王太郎『煙か土か食い物 Smoke, Soil, or Sacrifices』

講談社文庫。帰りの地下鉄で読み進めていたもののなかなか進まず、ある眠れなかった休日の朝に残りを一掃。主人公は不眠。つらいよね不眠。
初舞城。文体やスピード感が特徴との噂に期待して読むも、そこんところはそれほどでもなく、口語主体で読みやすい点において恩恵を受ける。非ミステリー読者としてはミステリー的要素はほどほどでほどよく、読みやすく。
そこそこの尺の物語の中で、筋の展開というよりは人物の造形に多くを割いている印象。その人物たちは概ね魅力的。「そんな奴ぁいねぇだろ」成分の匙加減もちょうどよい感じがしたが、ぶっ飛んだ人々であることには違いないので、それは登場人物たちの話す方言が生身の人間らしさを演出しているだけなのかもしれない。本州のあの辺りを一括りにして申し訳ないが、2003年に観た劇団、本谷有希子の『石川県伍参市』を連想した。どんな話か憶えていないのがアレだが、吉本菜穂子あたりが訛って喋ってなかったっけか。あやふや。

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)