鴻上尚史『トランス』
三人芝居。何度となく再演を重ねられている(それは鴻上本人も言及しているように「舞台にかけやすい」少人数・設定ということもあろうが)戯曲。私が高校、演劇部の部室にあった VHSで観たのはおそらく1993年の初演(これ)。小須田康人、長野里美、松重豊。今から14年前に一度、それもビデオで観ただけの、もはや記憶もおぼろげなこと限りないのだけれど、やはりそれでも舞台を観た上で読む戯曲は、彼らの身体と声の像を伴って脳内を躍動する(松重豊のオカマは本当にずるい)。多分に脳内自己補正(捏造・妄想)が入るのは当然なのだが、もうその境目はわからない。まあ、ただ、そのぐらいになってしまったほうが「確認作業」になってしまわず楽しい気もする。
三人芝居。三人がほぼ均等に絡み合う。三者三様のメリハリのきいた魅力。正直、物語の内容や設定、テーマにはあまり興味がわかないけれど、「三者を絡み合わせるための設定」としての機能性はなかなか。共通の思い出や記憶を下敷きにしながらも、きちんと現在進行形の感情が揺れ動いてゆくことが、きちんと物語を前方に推進している。読まさる。
以下、魅力を感じた気づきメモ。
- 誰しもに悩みや欠如した部分があること。
- 盛り上がり→フッと抜く の緩急。
- 過去の匂わせ方/振り返り方。
- 勘違いから発生する心情描写と読者への説明。
- モノローグの使い方。
- 必然性のある対句の連射(が生むわかりやすさ)。
- 「饒舌なオカマ」の存在が生むドライブ感。
- 終盤の一気なまくり方(これは演劇だからかなー)
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あと、鴻上尚史のあとがき(上演の手引き、またはあとがきにかえて)の一部分にハッとした。
演劇は、リアリズムを越えて、本質と簡単に握手できるメディアなのですから。
(P150)
演劇論、的なことについて読むことも考えることも暫くしてこなかったけれど、いまさらながらあらためまして、そうだよね、と確認。
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あ、新版が出ているみたい。入手可能なのはこっちか。
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