柴崎友香『きょうのできごと』

文庫版。つい立ち読みした保坂和志による解説文が興味深く、買ってみた。映画は映画館で観た。けっこう好きな映画だったと記憶しているが、とにかく頭の中で「ジョゼ虎」とかぶってしまっているので、なんとも。
なにぶん「トラブル」だの「波風」だのが大の苦手な私としては、こういう小説は超大好きである。淡々と風景と機微が描かれる感じが、深く深く内面まで降りていかない感じが、気持ちよい。小説に何を期待するかっていうのは人によりけりだと思うけれど、私にとってはこういうことです。大満足読書体験。親しみやすいトーンは関西弁に負っている部分も結構あると思うのだけれど、それはそれで作者の個性であり強みでもあるもんなあ。
なお、文庫版には書き下ろしの「きょうのできごとのつづきのできごと」が収録されており、書き下ろしと知らずに読んでしまったので読後感をもったいないことをしてしまった。それだけ違和感のないシームレスな書き下ろし。これはこれで、いろいろと興味深い。ここは陳腐とのキワキワな気もするけれど。

きょうのできごと (河出文庫)

きょうのできごと (河出文庫)