佐藤尚之『明日の広告』

読みたい読みたいと思っていたら友人がくれたラッキーな一冊。はじめはのんびり、徐々に興奮気味に読み終えた。
たくさんの示唆に富みまくりの本書。なかでも「消費者をパートナーと呼ぶ」「とことん観察する」のあたりはグッときた。テクニックではなく、とことん見る。なんなら自分もそうなっちゃう。スラムダンク一億冊感謝キャンペーンのくだりはブルブルきた。そりゃわたしもDVD買っちゃうよね。当時東京に住んでたのに行けなかったことをとても悔やんだ。
わたしは「仕掛ける」という言い方があまり好きではない。それは、妙に上から目線というか、対象を好きでたまらない人たちに対して別に対して好きでもない人が「こうすりゃ喜ぶんでしょ」みたいな偉そうで無礼なアプローチだというイメージがあるからだ。けれど本書の言うところの、「まずはスラムダンクがんがん読んで自分がファンになっちゃおうぜ」みたいな姿勢はとても好きだし、「ああ、こんなやり方ってアリなんだ。やっちゃっていいんだ」。と目から鱗だった。
「やっちゃっていいんだ」なんて偉そうに言ったけど、それはとっても大変なことで、仕事である以上は自分が好きになれないものを扱うこともある訳で。でもきっと、何かひとつを猛烈に好きになれた人なら、そのような熱狂にも似た心的態度を経験したことのある人なら、自分が好きになれない商品に対しても想像力のリーチをぐんと伸ばせるような気がするという無根拠楽観。「嫌い」や「無関心」の気持ちをとことん知ることも大切だろうし。要はどれだけ真剣に見ているか、真剣に考えているか。
たぶんこれって糸井重里の言うところの「消費のプロ」ってことだ(この平武朗って人すごいなあ、尊敬する。わたしもなにかでこうなりたい)。あと、ちょっとずれるかもしれないけど梅田望夫の「没頭」とか言うあたりも近いテーマな気がする(語られているのは作り手としてのだけれど)。好きなことを仕事にしてるやつなんてほとんどいないのは当たり前で、それは半端ないことだからだ。彼らは半端なく好きで、そして半端ない努力をしている。ぼやいてる人間は、その「好き」がどんだけのものか真剣に自問する必要があるだろう(自分含め)。
いわゆる広告業界に未だ抵抗があり、仕事として目指すかどうか逡巡中なのだけれど、業界云々別にして「コミュニケーション」ってすごくやってみたい仕事だなあ、そしてそれは、今でも少しやってる仕事だなあって思った。