それが、うれしい。

大通駅の駅貼りポスター、ときどき目にする長沼静きもの学院。出演は土屋アンナ。ここのコピーにいつもグッとくる朝なわけで。今回はこれ。

どうしてもかなわない80歳がいる。
それが、うれしい。

あー、たまらんなこれ。1行目だけでも充分に強い。たぶん、これだけでも成立するくらい。土屋アンナが凛としているその姿で、それでもなおかなわない80歳がいるということ。それだけで「おっ、なんだこれ?」って人をキャッチするだけのコトバだし、年月を重ねるごとに美しく着られるようになり着物、というところにまでスッと落ちて納得がゆく。
これに「それが、うれしい。」を付けちゃうのって英断だったんじゃないのかなーと思う。「これ、蛇足ちゃうんか」とか迷わなかったんだろうか。けれど、この2行目があることがすごい。斜に構えた言い方をすれば、1行目だけだったら「ああ、着物はババアの着るものだもんな。」で終了、という読み方だってできてしまう。そこに「それが、うれしい。」があることで、着物がグッと土屋アンナ(と同じ若い世代)に引き寄せられる。自分もいずれ80歳になるのだ、という連続性。我が事になる。
そこには、年月を重ねること=歳をとること=ばあさんになることをネガティブにではなくポジティブにとらえることができるのだ、それもよくある年の功だの知恵袋だのではなく、若い世代にも関心事である(つまり普遍的である)「美しさ」において、という「新しい価値観の提示」がある。それもサステナビリティという、このご時世にマッチした価値観。多分に普遍的でありながら、2008年の今に激しくマッチしているという。あー、たまらんなこれ。
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