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織田作之助『夫婦善哉』

新潮文庫。初オダサク。 「僕と共鳴せえへんか」 (「夫婦善哉」P20) ってこれだったんだ!とぜんぜん知らぬまま町田康が好きと言い続けてきました。町田康はもう何年も読んでいません。読めていません。ダメダメでどぎついながらもチャーミング。地名や数…

ロダーリ『猫とともに去りぬ』

光文社古典新訳文庫・関口英子訳。この著者のことは知らず、光文社古典新訳文庫というだけで、そしてタイトルで購入。すべて湯船1回1話(稀に2話)で読了。 解説によれば著者にしてはキャリア転換期に書かれた、現代社会風刺をまじえたファンタジー。ファン…

『何度も読みたい広告コピー』

キャッチコピーはもちろん、ボディコピーに着目した一冊。よい。もともと好きなコピーも載ってたし、知らなかった素敵なコピーともたくさん出会えた。職場の席に備え付け。 各作者によるボディコピー論コメントも掲載されており、それはそれはバラバラなこと…

鈴江俊郎『髪をかきあげる』

7年前くらいに友人からもらった中の一冊。第40回(1996年)岸田國士戯曲賞受賞作品。舞台は未見。 案の定、静かーで地味ーで、「えっ」とか「あっ」とか、フツーのせりふのやりとりで展開。ちょっとズレた調子をときおり放り込みつつ、原則ローテンションに…

ディケンズ『クリスマス・キャロル』

光文社古典新訳文庫、池央耿訳。まだクリスマスも冬すらも遠い、残暑の9月の湯船にて初読。 冒頭、いわゆる徹底的に前フリ的なくだりを読みながら、極薄の聞きかじり記憶がよみがえる。ああそういえば。このへんくつじいさんが。そうかそうかと。そうとなれ…

円城塔『オブ・ザ・ベースボール』

文春文庫。文學界新人賞の表題作と「つぎの著者につづく」の2篇。初円城は、出張からの帰途、羽田空港の有隣堂で文庫を物色して、たまたま。決め手は「薄さ」と「文字の大きさ」と「伊藤計劃を読んだ直後で興味があった」。 羽田→新千歳で前者を読了。文學界…

伊藤計劃『ハーモニー』

ハヤカワ文庫。情報考学にそそのかされてAmazonポチリ。しばらく寝かせた後に(厚いので気後れしていた)、通勤地下鉄で読み始め、東京出張往路機内で残りを読了。全身を震わせながら着陸。SFへは特に親しんでこなかった自分として、特にSFだと意識すること…

朝倉かすみ『田村はまだか』

光文社文庫。同郷かつ北海道発作家(今は東京在住?)なこともあり、しかもこのタイトルで、ずーっと気になりながら手を出せていなかった作品。 目次で「あ、短篇集なんだ」と知り、その後「あ、短篇の連作なんだ」と知り。タイトルだけを自分のなかで随分と…

鷲田清一『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』

ちくま文庫。とってもすらすら読めてうれしかったんだけど、もともと10代の読者に向けて書かれた本だということを知って、そりゃ読みやすいわと。そして「10代の俺は、この本、きちんと読めたかな…」と若干ブルー。 ファッションとは何ぞや?モードとは何ぞ…

志賀直哉『小僧の神様・城の崎にて』

新潮文庫。古本。ちまちまちまちま、数ヵ月かけてしまった。ようやく読了。短編集。 「城の崎にて」だけ国語の教科書で読んだことがあって、当時もあんまりピンと来ないなあと感じながら定期試験には「死へのなんちゃらかんちゃらがどうのこうの」とかわかっ…

舞城王太郎『煙か土か食い物 Smoke, Soil, or Sacrifices』

講談社文庫。帰りの地下鉄で読み進めていたもののなかなか進まず、ある眠れなかった休日の朝に残りを一掃。主人公は不眠。つらいよね不眠。 初舞城。文体やスピード感が特徴との噂に期待して読むも、そこんところはそれほどでもなく、口語主体で読みやすい点…

開高健『生物としての静物』

集英社文庫。中学生の頃に小樽駅前の紀伊国屋書店で購入したエッセイ。ときどきぱらぱらと眺めてはニヤニヤしてきた、挿画も素敵な道具への愛情記。このほど久しぶりに腰を据えて再読。中学時代と違うのは傍らにウィスキーがあること(ニッカだけど)。平日…

川上弘美『おめでとう』

文春文庫。とにかく「神様」でガツンとやられた私(まだ言ってる)にとっては、すっかり恋愛小説の人になったように見える川上弘美がいまだに少し変な気持ちになるというか。そんな何冊も読んでるわけではないのだけれど。とはいえ自分にとってはすいすいと…

串田孫一『文房具56話』

ちくま文庫。この本のことは私が文房具好きになったきっかけのひとつ・雑誌『広告』の文房具特集で引用されていて、当時はその雑誌その特集にそもそも驚きというか、文房具を意識させられて間もない頃だったので、この本についても「こんな本が成立している…

鴨長明『方丈記』

青空文庫。三大随筆のひとつを、そういえば読んだことないわと思い立ち。教科書にそれなりに載っていた枕草子や徒然草と違って、方丈記って著者名と冒頭文以外を国語の時間に習った記憶がないのだけど、俺の気のせいかしら。 学生時代、古文がとても苦手だっ…

絲山秋子『イッツ・オンリー・トーク』

文春文庫。表題作と「第七障害」の短編2つ。風呂に浸かりながら、さらさらと読めた。初絲山。これがデビュー作なんですね。 どちらの話も、全体を通じて、ずいぶんと簡単に書き流していているような印象を受けた。実際の創作現場、作者内の葛藤や試行錯誤プ…

ツルゲーネフ『はつ恋』

神西清訳・新潮文庫。 ひらがなで「はつ」とか言っちゃって、ほんわか構えさせちゃっといて、想像以上のヘビーさにキン肉マンさながら「ゲー!」って言っちゃうほどの驚き。 とはいえ予め筋を知った上での読書だったので(伊藤聡『生きる技術は名作に学べ』…

J・D・サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』

村上春樹訳・白水社ペーパーバック版。 苛々しっぱなし、むかつきっぱなしの300ページ強。何度も読むのを中断しようと思い、それでも読み続け、やっぱりまたかと憤慨し、この読書時間の無意味さを疑いつつ、残りの厚みを眺め、仕方なく読み進めてみる、その…

太宰治『走れメロス』

新潮文庫。おなじみの表題作を含む短編9つ収録。国語の教科書に載ってた小説って、文庫本などで改めて読むと、そのあまりの短さに(そして、その短い物語をいかに時間をかけて何度も読んで、そのうえテスト対策なんかもしていたことに)気づかされ、驚く。 …

高畑正幸『究極の文房具カタログ【マストアイテム編】』

文具王の本。昨年より、ちびりちびりと読み進めていたものを、惜しみつつ読了。なんにもしたくない、けれどなにかがものたりない、そんな心境の私を救ってくれた本書。文房具って本当に素晴らしいものですね。 概ね廉価で普段使いの文房具を1点ずつ紹介して…

中島たい子『漢方小説』

集英社文庫。いっつもブックオフにあるのを見て、たいそう売れた小説なんだろうと思ってきたのを、ようやく100円購入。すばる文学賞受賞作。 おもしろおかしく、すいすいテンポよく読める。うれしいこともつらいこともごちゃまぜにしながら冗談のような言い…

『新美南吉童話集』

岩波文庫・緑150-1/千葉俊二編。 新美南吉といえば「ごん狐」。そのくらいは知っているし、それ以外は知らない。しかしながら「ごん狐」がどういう話だったか、よく考えたらぜんぜんおぼえていなくって、読んでもやっぱり思い出せなくて、そんな自分にがっ…

岡野宏文×豊崎由美『読まずに小説書けますか』

2011年の頭に、今年はたくさん小説を読もうと(例年のように)決め、その索引として購入した本を、2011年の晦日に読了。あーあーあ。来年からたくさん読もうー。まあ、これ一冊置いておけば「読むものがない」ってことにはならんだろう。規則正しく読み続け…

長嶋有『猛スピードで母は』

文春文庫。なんせいいタイトルだなーと芥川賞受賞報道を見て気になったまま、ずーっと読まずにきたのは「母の話」への薄い抵抗があったからかもしれない。映画にもなった「サイドカーに犬」との2本立て。どちらも淡々と静かに進む、心安らかに読める小説。短…

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

ハヤカワepi文庫。カセットテープの表紙をジャケ買いし、数年放置していたものを今年8月頃より読み始め、2ヵ月ほど中断した後にちびちび再開、残っていた100ページ強を昨夜今朝で読了。 たまたま栞が手元にないままに地下鉄でちびりちびりと読み進めていたの…

子安大輔『ラー油とハイボール 時代の空気は「食」でつかむ』

新潮新書418。書店のランキング棚で購入。 こと北海道で仕事してると、やっぱり「食」って不可避なわけで、個人的には食に無頓着な人生をおくってきたとコンプレックスを感じている部分でもあるため、日頃の意識はもちろん、たまにはこんな本も読んでおこう…

チェーホフ『可愛い女・犬を連れた奥さん 他一篇』

岩波文庫赤622-3/神西清訳。 なんせ「犬を連れた奥さん」がいい!タイトルも、入り方も素晴らしい。無理なく素早くずわっと世界観に引きずり込み、そして広がっていく。 海岸通りに新しい顔が現れたという噂であった ― 犬を連れた奥さんが。 (「犬を連れた…

太宰治『お伽草子』

新潮文庫。だいぶ前に友人からもらった一冊。短編集。 とにもかくにも冒頭一発目「盲人独笑」の、ものすごさにやられた。ぐっときすぎる。生にせまらさる。葛原勾当、ぜったいに太宰が創作した架空の人物なんだろう(そういう構造の小説なのだろう)と信じき…

長沢朋哉『世界一シンプルな「戦略」の本』

じだらくさん紹介されていたのを思い出して購入。 見たことのないような新しい何かが書かれている、というわけではない。けれど、ここに書かれている内容を自分できちんと説明できるかというと無理。シンプルに、平易に、ロジカルに整頓された実用書。再読を…

川端康成『雪国』

鈴木のやっと読んだったシリーズ。講談社文庫。記憶違いがちなので冒頭をおさらい。 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。 (P7) 大きい視点と小さな視点が綾なす臨場感ある美しい描写。幼少の頃よりチャーザー村の話などを耳にす…